ハードウェア開発は初期投資が大きく、プロダクトのGross margin(売上総利益)のみで継続成長しようとするならば、相当な販売数が必要となる。ニッチ市場をターゲットとする多くのハードウェアスタートアップにとって、バージョンアップや新商品を高速で開発し、ヒットさせ続けるのは至難の業だ。

 

まずは、開発の思想をグッズ・ドミナントロジック(モノ支配論理)からサービス・ドミナントロジック(サービス支配論理)へ移行、つまり、プロダクト・ファーストからサービス・ファーストへと転換しよう。そのためには、SaaSのビジネスモデルなど他のサービスから学ぶことが重要である。

 

0. ベースとなる指標

 

LTV(Customer Lifetime Value):顧客生涯価値

MRR (Monthly Recurring Revenue):月次定期売上

ARPA(Average MRR per Account):顧客ごとの平均月次定期売上

MRP(Manufacturer’s Recommended Price):希望小売価格

1. 消費財とのセット

おそらく、多くの人が親しみのあるであろうEコマースを組み合わせたモデル。自社のプロダクトの独自規格(クローズド)にしてスケールさせられれば、乗り換えコストが高いため顧客の囲い込みが可能となる。また、ランニングの売上は2パターン取り得る。
・月額(定期購入)
・従量課金

売上の計算式は以下のとおり。

LTV = (MRP + ARPA × Duration)× Average Customer Lifetime
LTV = (希望小売価格 + 平均月次注文単価× 継続期間)× 顧客数

<事例>

PicoBrew

自家製のオリジナルビールを作ることできる醸造マシン。
専用の材料キットを購入することで、いつでも新鮮なビールが醸造できる。また、BrewMarketplaceというコミュニティサイトを展開しており、世界中の地ビール生産者とも繋がり情報を得ることができる。

Tokyo Shave Club

カミソリの定期購入サービス
本体のカミソリを購入すると、その後は毎月自動で決済され替刃が届く。
類似サービス:Dollar Shave ClubHarry’s

Nespresso
専用カプセル式のコーヒーメーカー。
ユーザーは一度マシンを購入したら、専用のコーヒーカプセルを継続購入する。
類似サービス:Keurig

 

2.サービス(SaaS)連携

消費財に似ているが、こちらはwebサービス・アプリといったソフトウェアによるサービスがメインで、その補完機能としてハードウェアを活用するところに特徴がある。

LTV = ARPA (Average MRR per Account)× Average Customer Lifetime

<事例>

Fitbit

フィットネス用のリストバンド・腕時計型の活動量計。
年会費を支払いプレミアム会員になると、パーソナルトレーナーや栄養士などのサポートが受けられたり、他のユーザーとの比較機能が使えるようになる。

Voyce

飼い犬用の首輪型ウェアラブルデバイス。
バイタルサイン(消費カロリー、心拍数、呼吸数、睡眠)を測定し、飼い主はWi-Fi経由で同期された情報をスマートフォンやPCでチェックできる。また、月額料金を支払うことで、専門家がカスタマイズした健康プログラムやフィードバック等のサービスを受けることができる。

Safie

セキュリティカメラのクラウドレコーディングプラットフォームを提供している。
ユーザーはライブ視聴は基本無料、月額料金を支払うことで7日間の録画等のオプションサービスが受けられる。同社がユニークなのは、ハードであるカメラは自社開発せず、協力会社のカメラメーカーに対してクラウドサービス(ソフトウェア)を無償提供することで利用者を獲得するビジネスモデルをとっているところだ。

3.リース Hardware as a Service

ハードウェアおよびソフトウェアの使用権をサービスとしてライセンスする。
多くの場合、月額課金で半年~1年サイクルを契約期間として提供している。顧客にとって財務的なメリットが大きく、B2Bに展開する際には特に効果的である。

LTV = ARPA × Duration× Average Customer Lifetime

<事例>

SnSnap

スマートフォンで撮影し、 #ハッシュタグでSNS投稿すると、その場でプリントして お持ち帰りいただける。イベントでのスポット利用やデバイスの常設を行い、サービスとしてハードウェアを提供するモデル。

ZaaZ

食べ物などの匂いがするミストを発生するマシン。年間契約で設備と匂いの元となるボトルが月一本利用でき、ボトルを必要に応じ追加購入が可能。

4.データ販売/コンサルティング

プロダクトは自社で保有し、取得できる独自性・希少性の高いデータを販売する。また、データそのものだけでなく、AIやデータサイエンティストによる分析結果を提供することでマネタイズする。Product RevenueよりもむしろService Revenueに重きを置いたモデル。

 <事例>

AXELSPACE

低軌道を周回する50センチメートル四方の超小型衛星群を打ち上げ、気象データや地形データを販売する。