Phresh Organicは、グローバル課題に立ち向かおうとしているスタートアップだ。
中国に拠点を置き、イスラエルのバイオテクノロジーとマイクロ電子技術を駆使した食品防腐剤を開発している。今回お話を伺ったのは、Phresh Organicの創立者でもあり、現在ニューヨーク大学上海校に通うアミット氏。学生でありながら、CEOとしてイスラエルの教授と連携をとり、起業に至った。

バイオテクノロジーに軸を置きながらもハードウェアと融合した、家庭に受け入れられるキュートな食品防腐製品「フードプロテクター」。生鮮食品のそば置くだけで腐敗を3倍遅くさせることができるキッチンのスーパーヒーローだ。その開発経緯と面白いチーム構成、そしてフードプロテクターがもたらす将来のエコフレンドリーライフスタイル実現のための意気込みを語っていただいた。

各界のスペシャリストが生み出したキッチンのスーパーヒーロー

―バイオテクノロジーを軸にハードウェア製品を開発するにあたるまでの成り立ちと、どのようにPhreshのチームができていったのかを教えてください。

 
アミット・ガル・オー氏(以下、アミット):フードプロテクターの製品化までには同チームメンバーのアリー・マーカス教授(バングリオン大学・イスラエル)の12年間にも及ぶバイオテクノロジーの研究が背景にあります。この研究はマイクロカプセレーションという技術を使った、食品の腐敗を促進してしまう特定のバクテリアや菌を減少させることができるパウダーの開発です。

クローブ、スペアミント、タイムといったスパイスから抽出されるエッセンシャルオイルの調合によって腐敗防止に高い効果があるオイルの開発。そして、そこにオイルの蒸発を抑制・調整できるマイクロパウダーをオイル粒子にコーティングし、生鮮食材の腐敗防止に効果があり、また食材に害のないオーガニック防腐剤が生まれました。

起業のきっかけはマーカス教授が、とある企業にこの技術を発表した、と噂で聞いたことでした。研究内容、今後の可能性を考えれば考えるほど、世界を変える製品になる!と私の中で何かがヒットしたんです。すぐにマーカス教授にコンタクトをとり、製品化協力のお願いをしていました。

私たちのチームは各々がまったく違うバックグラウンドとスキルを持った構成になっています。私は上海にあるニューヨーク大学の学生。バイオテクノロジーを専攻しています。マーカス教授はイスラエルの研究者であり、パウダーの開発者でもあります。アンディーは中国でのビジネス・コミュニケーション方法を指導してくれる、会計士。WKは、フードプロテクターのハードウェア、主に電池の開発に携わっています。この4人でPhreshはスタートしました。

 

可愛い!から始まるエコライフスタイルの実現

 
―Kickstarterでこのフードプロテクターを見た時に、まずは可愛い!キッチンに置きたい。と思ったんです。ただの袋に入った防腐剤を販売することも出来たと思いのですが、敢えて製造コストのかかるハードウェアとして製品化した理由はあるのですか?

 
アミット:まさにそれが狙いです。最初は可愛い、スタイリッシュという視覚的魅力から興味を持ってもらいたいと思ってハードウェア製品にしました。この形にするまでに、袋の状態で販売するか、冷蔵庫にパウダーを搭載するか、などというアイディアも浮かびましたが、どれも家庭、特にキッチンという主婦や子供の目に触れやすい場所に馴染まないと考えました。
これはフードプロテクターの優位性でもあるのですが、科学テクノロジーを一般家庭で利用してもらう時、ユーザーがコンピューターオタクのように説明書を読まなければいけなかったり、有毒性を気にしたりという非日常的な作業を徹底的に排除したいと思いました。

「ハイクオリティ・ファニチャーピース」というコンセプトで、iPhoneのようにシンプルで手間のかからない、クールな製品を消費者は求めている。ユーザーが使用しているのを常にイメージしながら考えついたのが、製造コストの高い、ハードウェアに行き着いたのです。
筐体の中には防腐剤であるパウダーが入っており、LEDがその効果度合いを示し、パウダーの交換時期を伝える役割をしています。筐体を開けるとライトがつき、ユーザーに持続可能なエコライフをしている、と気づかせてくれるのです。

 
―デザインに関して、いろいろなアプローチができたと思うのですが、ロボットとりんごの2つに絞った理由はあるんですか?

 
アミット:はい。これは私が上海に来て気づいたことですが、人々は意外にもロボットに可愛らしさ、愛着を持っているんです。特にアジアではそれが顕著で、日本でいうとドラえもん、アトム、ガンダムのように生活に溶け込みやすい。人ではないけれど、動物でもない。何か特別な力がある象徴としてのロボットはまさにフードプロテクターにぴったりだと思いました。

りんごに関しては、たとえカラーバリエーションがあったとしてもオブジェクトとして親しみやすい。子供の頃からディズニー映画などでも目にしていたりしますから。

 

カクテル式ミラクルパウダーの課題と展望

―バイオテクノロジーとハードウェアが融合して生まれたフードプロテクター。どんな課題や困難がありましたか?
 
アミット:まず課題となったのは中国で工場を決めることです。特に生鮮食品に触れるものですので、これには数ヶ月もの時間と打ち合わせを重ねました。フードプロテクターに必要だったのは、筐体、有効期限を知らせるLEDライト、バッテリーというシンプルなものでしたが、私たちが欲しい品質にマッチする工場を探すのは苦労しました。電池は薄型でエコなプリント式の特注バッテリーにしました。

現在はイスラエルの大学研究所でプロトタイプ作りをしていますが、7月の量産化、8月の配送までスムーズに行くように工場との連携は欠かせないと肝に銘じています。

良いアイディアとデザイン、12年もの研究、そして環境保護への思いがフードプロテクターには詰まっています。それをユーザーが手にするのは工場で生産された最終プロダクト。つまり量産化には一切の妥協をすることはありません。

 
―フードプロテクターの今後のビジョンについて教えてください。

 
アミット:私たちがフードプロテクターによって現実化したいことは2つあります。1つは、フードプロテクターの活用範囲を広げ、食品業界に革命をもたらすことです。現在はきゅうり、トマト、キノコ類、ポテトなど約15種類の食材に圧倒的効果があることが証明されています。

各オーガニックオイルがピンポイントで特定の菌、バクテリア、ウィルスに効果があるので、その組み合わせ方法によって今後は他の食材、生花、そして化粧品にも応用できます。まさに食品を守るカクテルパウダー。使用場所も家庭だけではなく、食品運送会社、倉庫、農場でも活用できます。食品業界を悩ませていた生鮮食品の廃棄問題を解決出来るポテンシャルがあるのです。

2つ目にもっと大きな課題、環境問題の改善です。フードプロテクターの普及は廃棄食材を減らすことによる家庭の金銭的、時間的なメリットをユーザーに与えるだけでなく、人々を食品ロス問題改善に携わるプレイヤーとして巻き込むことができるのです。エコフレンドリーで無駄のないライフスタイルの実現と人々の環境に対するささやかな配慮の形成が我々の最終目標です。

実際にKickstarterではキャンペーン開始日から僅か20日で目標提示金額の達成に成功しています。それだけ環境への意識があり、私たちを支援してくれる人々がいます。フードプロテクターがさらにこの輪を広げるきっかけとなると願っています。

 
―アミットさん、ありがとうございます。最後に同じスタートアップ起業家の人々にメッセージをお願いします。
 
アミット:特にハードウェアスタートアップ企業が迎える問題は想像をはるかに超えて発生してくる。これは間違いない現実です。その問題を一つ一つに向き合わないと事業自体に大きな問題があるように見えてしまうのです。そんな時は大きな問題は無視をして、細分化し丁寧に向き合ってください。